クラウドはオープンソースを殺すのか?

いきなり、物騒なタイトルですが、ここ半年以上気になっていた事を書いてみます。時代は一気にクラウドに向けて走っている感のあるこのごろですが、オープンソースなしにはクラウドコンピューティングの出現はなかったというのは、おそらく誰も否定し得ない事実だろうと思います。特に、オペレーティングシステムであるLinuxの果たした役割は非常に大きく、Linuxなしには、Amazon EC2Googleも、Salesforce.comでさえ出現しなかったのではないでしょうか。しかし、どんどんクラウドが使われるようになってくると、Linuxをはじめとするオープンソースソフトウェアのエコシステムが変わっていく、そんな感じがしています。

オープンソースソフトウェアが一般企業のIT部門に受け入れられてきたのは、ベンダーロックインの排除や、企業のシステムが、商用ソフトウェアのライフサイクルに左右されてしまう事への危惧もありますが、やはりライセンスコストがいらないという事が最大の利点の一つであった事は確かだと思います。これがあるからこそ、開発・運用要員の教育コストや、サポートコストの問題があってもオープンソースソフトウェアを導入するメリットがあったと言えるでしょう。

これは、Linuxそのものだけでなく、その上で動作するアプリケーションにも言える事です。もっとも最初に受け入れられたメールシステムはもとより、WebサーバやアプリケーションサーバCMSやブログシステムといったものも、商用ソフトウェアとの対比の中でメリットを見いだされ使われてきたのだと思います。

ところが、クラウド化の進展により、一般企業のIT部門からみると、こうしたオープンソースソフトウェアの魅力が薄らぎつつあるのではないでしょうか。

例えば、現在自社でメールシステムを運用する事がメリットがあるのは、どのくらいの会社でしょうか?Google Apps Standard Editionなら、50アカウントまでは無料でメール・カレンダー・ポータルや文書共有などの機能が使えますし。50人を超えても一人月額500円で有償サービスが受けられます。ウイルス対策やスパム対策も含まれたものである事考えれば、自社導入して運用にかかるコストを支払うより経済的に思えるのは確かでしょう。セキュリティホールの心配もしなくてよい訳ですし。

こうして見ると、クラウド化の進展によって、一般企業のIT部門がLinuxなどのオープンソースソフトウェアを使う大きな理由の一つが消えつつあるように思えるのです。